家族や取引先の電話番号でも安心できない?「電話番号の偽装」から身を守る方法
家庭と中小企業のセキュリティ
こんにちは。アイエーアイの藤本です。
スマートフォンに家族の名前が表示されたら、いつものように電話に出ますよね。会社でも、取引先の番号からの着信なら、安心して話を聞く方が多いと思います。
でも、ここで知っておきたいことがあります。着信画面に表示される電話番号は、偽装されることがあります。家族や取引先と同じ番号が出ていても、それだけで本人からの電話だと判断することはできません。
今回は「スプーフィング」と呼ばれるなりすましのうち、電話番号の偽装を取り上げます。難しい仕組みを覚えるよりも、家庭や会社でどう対応するか。一緒に確認してみましょう。
最初にお伝えしたい3つのこと
- 知っている電話番号の表示も、本人である証明にはなりません。
- 送金・口座変更・暗証番号などの話が出たら、いったん電話を切りましょう。
- 以前から登録している連絡先や、自分で確認した公式窓口に、こちらから連絡して確かめましょう。
「家族の番号なのに、家族からではない」が起こる
電話番号の偽装とは、実際に発信している回線とは異なる番号を、受け手の着信画面に表示させることです。「スプーフィング」は相手を偽ることを指す言葉で、電話以外にも使われます。
たとえるなら、届いた封筒の差出人欄に、別の人の名前が書かれているようなものです。差出人の表示と、実際に送った人が一致するとは限らない。電話の番号表示でも、同じように考える必要があります。
スマートフォンが電話帳と番号を照合して名前を表示する場合、偽装された番号に登録名が対応し、知っている人の名前で着信が表示されることも考えられます。名前が表示されていても、本人確認が済んだわけではありません。
図解:着信画面の表示と、実際の発信者は別
家族を装う第三者
家族と同じ電話番号を名乗る
家族の番号や、電話帳の登録名が表示される場合がある
カンテレNEWSの報道では、登録済みの同僚の名前で着信する実験が紹介されています。ただし、この実験はオフィス内の回線で行われたものです。一般の電話網でも同じように、誰でも任意の番号を使えると受け取らないようにしましょう。カンテレNEWSの報道動画
一方、実際の被害への注意喚起もあります。電気通信事業者協会(TCA)は、自宅・実家や警察の番号を表示させ、金銭を要求された事例を紹介しています。TCAの注意喚起
なお、番号が偽装表示されたことだけで、家族のスマートフォンが乗っ取られたとは限りません。番号表示の偽装と、端末やアカウントの乗っ取りは別の問題です。
情報漏えいが、なりすましを信じやすくする
2026年10月29日の報道では、企業への不正アクセスによる情報漏えいが、同年1〜10月に延べ約3億3千万件に達したとされています。「延べ」の件数であり、3億3千万人の別々の人が被害に遭ったという意味ではありません。同見出しの報道(埼玉新聞)
こうした情報漏えいで心配なのは、流出した情報が別のだましに使われることです。例えば、名前や住所、家族との関係、取引先の情報などを相手が知っていたら、話に現実味が出てしまいます。そこに知っている番号の表示まで重なると、疑いにくくなります。
ただし、電話番号の偽装に、必ず情報漏えいが必要なわけではありません。会社の代表番号など、公開されている情報が使われる場合も考えられます。また、今回の漏えい件数が、そのまま偽装電話の件数や被害人数を示すわけでもありません。
覚えておきたいのは、「こちらの情報を知っていること」も「知っている番号からの着信」も、それだけでは相手を信用する根拠にできないということです。
家庭では「いったん切って、自分から確認」を約束に

家族を名乗る相手から「急いでお金が必要」「誰にも言わないで」と言われると、落ち着いて判断するのは難しいものです。だからこそ、普段のうちに対応を決めておきましょう。
- その場では送金せず、情報も伝えない。暗証番号、パスワード、SMSなどで届いた認証コードは教えません。
- いったん通話を終了する。「確認してから、こちらから連絡します」で十分です。
- 以前から登録している連絡先を選び直す。家族なら電話帳の連絡先や普段の連絡手段、対面で確認します。役所・警察・銀行なら、自分で公式サイトなどを調べた窓口に連絡します。
- 連絡がつかなければ、送金を保留する。別の家族にも相談し、一人で判断しないようにします。
相手が教えた「確認用の番号」や、送られてきたリンクを使うと、また相手につながるおそれがあります。着信履歴の番号を押すだけで済ませず、今回の電話とは別に、信頼できる連絡先を選ぶことがポイントです。
「いつもと違う声」「知らない番号」だけを警戒の目印にしないことも大切です。番号や声が自然に感じられても、お金や大切な情報の話になったら確認する。この約束にしておけば、見抜く自信がなくても行動できます。
中小企業では「社長の電話」「取引先の番号」でも手順を省かない

会社では、電話の内容を信じて送金したり、振込先を変更したりする場面に注意が必要です。例えば、次のような連絡を想定しておきましょう。以下は対策を考えるための例で、特定の被害事例を示すものではありません。
- 社長を名乗る相手から「急ぎで、この口座に振り込んで」と頼まれる。
- 取引先を名乗る相手から「今回だけ振込先が変わった」と伝えられる。
- 保守担当者を名乗る相手から「確認のため認証コードを教えて」と言われる。
忙しい会社ほど、いつもの相手からの連絡は早く処理したくなります。ただ、番号表示を確かめるだけでは不十分です。次の3つを社内の決まりにしてみてください。
- 口座変更は、登録済みの窓口にかけ直して確認する。その電話や新しいメールに書かれた連絡先ではなく、従来の取引先台帳などを使います。
- 送金は依頼者以外の人も確認する。「社長の指示」「今日中」でも例外にしません。一人で経営している場合も、依頼元への独立した確認を終えるまで実行しません。
- 電話でパスワードや認証コードを渡さない。遠隔操作アプリの導入を頼まれた場合も、その場で進めず、契約済みの保守窓口に確認します。
電話対応で使える一言
「送金や口座変更は、社内の決まりで確認が必要です。いったん切って、登録済みの連絡先にこちらから確認します。」
担当者の勘に頼るよりも、全員が同じ手順で対応できるようにしておくと安心です。確認のために電話を切った人を、責めないことも大切ですね。
漏えいを防ぐことと、漏えい後に備えることを両方進める
報道では、自分の情報がどこまで漏れているか把握する重要性も紹介されています。ただ、「漏えいを防ぐ対策はもう意味がない」ということではありません。漏らさない対策に加えて、漏れた可能性に気づき、被害を広げない備えをすると考えてください。
個人であれば、利用サービスの公式な漏えいのお知らせを確認し、対象になった場合は案内に沿って対応します。パスワードが流出した、またはその可能性がある場合は変更し、同じものを使い回しているサービスも見直しましょう。多要素認証も設定します。
企業では、システムの更新、不要なアカウントの整理、顧客情報へのアクセス制限、保管する情報の削減などを続けます。そのうえで、漏えいが分かったときの連絡担当者や、取引先への確認方法も決めておきましょう。
流出情報を探して通知する監視サービスもありますが、すべての漏えいを見つけられるものではありません。「通知がないから漏れていない」「今回の電話は安全」と判断する材料にはしないでください。
家族や会社で、まず共有していただきたいのはこの一言です。「電話番号の表示も偽装される。お金や大切な情報の話は、切って、こちらから確かめよう。」
もし送金してしまった場合は、すぐに振込先の金融機関と警察に連絡してください。通話の日時、相手の名乗り、表示番号、振込記録なども残しておきましょう。番号の本来の持ち主が犯人とは限らないため、表示番号だけで相手を決めつけないことも必要です。
参考情報
- 中国新聞「情報漏えい10月までに3億件超」(本稿作成のきっかけとなった記事)
- 埼玉新聞「情報漏えい10月までに3億件超 2年で100倍、AI無差別攻撃」(2026年10月29日。漏えい件数は、本文を確認できたこちらの掲載内容を参照)
- カンテレNEWS「“家族のスマホ”から『なりすまし詐欺電話』 新たな詐欺の手口“スプーフィング”とは」(実験の説明は提供された文字起こしを参照)
- 電気通信事業者協会(TCA)「発信者電話番号が偽装されて着信する通話について」
- 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ
2026年11月3日時点で確認した情報をもとに、アイエーアイが要約・解説しています。